[2006/04/01] ドライマウス(口腔乾燥症)
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部
顎口腔再建医学講座 口腔顎顔面外科学分野
工藤 景子(16期生)

 ドライマウス(口腔乾燥症)とは、唾液の分泌が低下して口腔内が乾いた状態のことです。症状が進行すると溝状舌、嚥下困難、発音障害、粘膜の灼熱感などの症状が現れます。また、唾液による潤滑作用、保護作用が機能しなくなるため、口内炎・歯周病・う蝕、口臭の原因になります。その他、味覚障害が起こることもあります。

<口腔乾燥症の原因>
 唾液の平均的な1日の分泌量は約1〜1.5リットルと言われています。
 歯科医院などで手軽に行える唾液量測定法として「ガムテスト」があります。10分間ガムを噛んで頂き、その間に分泌された唾液を採取します。この唾液量が10mL以下の場合、唾液量の分泌減少ありと診断されます。唾液の分泌が減少する原因には、下記のようなものがあります。
・加齢による唾液腺の機能低下
年齢とともに口や顎の筋力が低下や萎縮がおこり唾液の分泌量が低下します。
70歳以上で男性16%、女性25%の量的低下があると言われています。さらに、80才では老人性萎縮により25%以上唾液量が低下するとも言われています。
・食生活
現代の食生活では唾液を十分に出さなくても飲み込めるようなファーストフードや食事が主流になっています。このため唾液の分泌が従来よりも少なくなり、口の中の潤いが足りず、口が渇く、舌がひび割れて痛い、などの症状があります。
・精神的ストレス、緊張
現代はストレス社会とも言われています。ストレスがかかったり緊張をすると交感神経が刺激され、唾液の分泌が抑制されます。
・薬物による副作用
抗鬱剤(抗うつ剤)、鎮痛剤、抗パーキンソン剤、降圧剤などのいくつかの薬物の副作用として唾液分泌の低下があります。
・口呼吸
鼻炎などの鼻疾患や癖などで口で呼吸をすれば唾液は蒸発してしまい口が渇く原因となります。
・その他病気など
脱水症、糖尿病、シェーグレン症候群などの疾患の症状として、口腔乾燥症を呈します。また、放射線治療による副作用として、唾液腺が萎縮し、放射線性の口腔乾燥症を生じる場合もあります。また、原因は解明されていませんが、更年期障害の一症状として口腔乾燥感を訴えられる方もいらっしゃいます。

<治療法>
・ 原因除去
ストレスの軽減、食事改善など口腔乾燥症の原因を除去していくようにします。また、鼻疾患が原因で口呼吸になっている場合は、耳鼻咽喉科にてまず原因疾患の治療をして頂く必要もあると思います。
・対症療法
口の中の粘膜保護が必要なことから、保湿力の高いヒアルロン酸含有洗口液(オーラルウェット®)(図1.A)による含嗽、ジェル状保湿剤(オーラルバランス®)(図1.B)の塗布、あるいは人工唾液スプレー(サリベート®)(図1.C)による噴霧などを行います。
また、ガム療法(ガムを噛むことにより唾液分泌を促す)、味覚刺激療法(酸味のある食物の摂取し、唾液分泌を促す)、唾液腺マッサージ(耳下腺相当部や顎下線相当部のマッサージ)などがあります。鍼灸による治療もあると言われています。
・薬物療法
上記のような、原因除去療法や対症療法だけでは治癒しにくいと判断した場合には漢方薬、唾液腺ホルモンなどの薬物療法も行われます。最近、シェーグレン症候群による口腔乾燥に対する薬剤として塩酸セビメリン(サリグレン®、エボザック®)も使用されています。サリグレン®カプセルは内服だけではなく、水に溶解して洗口液として使用することにより、口腔乾燥症を緩和することができた症例も報告されています。
リストへ戻る 前へ 次へ